徐盛 - 濡須口の戦い、偽城の計略

徐盛 - 濡須口の戦い、偽城の計略

徐盛(?年-225年)は、呉の武将として孫権に仕えた名将。特に濡須口の防衛において大きな功績を挙げ、222年に一夜で偽城を築いて魏の曹仁を欺く巧妙な計略で知られる。水軍戦術に優れ、勇猛でありながら知謀にも長け、呉の北方防衛の要として活躍した。孫権からの信頼も厚く、建武将軍から安東将軍まで昇進した。

出自と初期の活躍

徐盛は琅邪郡莒県の出身で、孫権の時代から呉に仕えた。若い頃から武勇に優れ、数々の戦いで功績を挙げた。

史実: 徐盛は孫権の江東統一戦争の初期から参加し、その勇猛さで知られるようになった。特に水軍戦において優れた才能を発揮した。

孫権への仕官

徐盛は孫権の覇業拡大期から仕官し、各地の征伐に参加した。その武勇と忠義は早くから認められていた。

史実: 徐盛は山越討伐や黄祖攻撃などの初期の戦役に参加し、着実に功績を積み重ねていった。

濡須口の防衛

徐盛の最も有名な功績は濡須口の防衛である。この要地を守ることで、呉は魏の侵攻を食い止めた。

濡須口の戦略的重要性

濡須口は長江の要衝で、呉の都建業を守る重要な防衛拠点だった。ここを破られれば呉の中枢が危険にさらされる。

史実: 濡須口は長江が狭くなる地点で、対岸への渡河を阻止するには最適の防衛地点だった。呉はここに濡須塢を築いて守りを固めた。
  • 地理的要衝:長江の狭窄部
  • 戦略的価値:建業防衛の要
  • 防衛施設:濡須塢の建設
  • 水軍基地:呉水軍の重要拠点

濡須での戦い

徐盛は濡須口で魏軍と何度も交戦し、その都度撃退に成功した。特に水上戦での活躍が目覚ましかった。

史実: 曹操が濡須口を攻撃した際、徐盛は果敢に迎撃し、魏軍の渡河阻止に成功。この功績により建武将軍に昇進した。

偽城の計略

徐盛の最も巧妙な戦術として知られるのが偽城の計略である。一夜にして偽の城を築き、敵を欺いた。

偽城建設の詳細

222年、魏の曹仁が濡須口を攻撃した際、徐盛は一夜のうちに偽の城壁を築いた。これは布や竹を使った巧妙な偽装工作だった。

史実: この偽城は遠くから見ると本物の城壁に見え、魏軍は呉が短期間で大規模な防御工事を完成させたと錯覚した。
  • 建設期間:一晩で完成
  • 材料:布、竹、木材
  • 効果:魏軍の心理的動揺
  • 結果:曹仁の撤退

心理戦の効果

偽城は物理的な防御効果よりも、敵軍の士気を挫く心理的効果が大きかった。曹仁は呉の準備の周到さに驚き、撤退を決断した。

賊在石頭、今急救之、有何由得之。昨夜建城壁、若此何不避之?

「敵が石頭にいるのに、今急に救援するとは、どうやって得られよう。昨夜城壁を建てるとは、このようなことをなぜ避けないのか」という曹仁の言葉が、その驚きを物語っている。

軍事的才能

徐盛は単なる猛将ではなく、築城術や欺瞞戦術にも長けた知将だった。その多面的な才能が呉軍の中で重用される理由だった。

築城術

徐盛は築城術に優れ、濡須口の防御施設の強化に大きく貢献した。彼の設計した防御工事は魏軍を長期間防ぎ続けた。

史実: 濡須塢の防御工事は徐盛の指導の下で行われ、その堅固さは魏軍を何度も撃退した。特に水上からの攻撃に対する防備が優れていた。

欺瞞戦術

偽城の計略に代表されるように、徐盛は敵を欺く戦術に長けていた。これは単なる力押しではない、知略を重視した戦い方だった。

史実: 徐盛の欺瞞戦術は呉軍の戦術書にも記録され、後の将軍たちの参考となった。特に劣勢時の心理戦術として高く評価された。

人物像と評価

徐盛は勇猛さと知略を兼ね備えた理想的な武将として評価された。孫権からの信頼も厚く、重要な防衛任務を任された。

忠義と人格

徐盛は孫権への忠義が深く、どのような困難な状況でも持ち場を離れることがなかった。その責任感は部下たちの手本となった。

史実: 徐盛は生涯を通じて反乱や離反とは無縁で、一貫して呉への忠節を保った。このような忠臣は呉の歴史においても稀有な存在だった。

孫権の信頼

孫権は徐盛を「呉の長城」と称し、濡須口という重要拠点の防衛を任せた。これは徐盛への絶大な信頼の表れだった。

徐盛以為国之良将、宜善待之

最期と後世への影響

225年、徐盛は安東将軍として病没した。その死は呉にとって大きな損失であり、濡須口の守備体制に大きな空白を生じさせた。

史実: 徐盛の死後、濡須口の防衛は他の将軍に引き継がれたが、徐盛ほどの知略と経験を持つ者はいなかった。

軍事的遺産

徐盛の築城術と欺瞞戦術は後の呉軍に受け継がれ、防御戦術の手本となった。特に偽城の計略は兵法書にも記録された。

史実: 徐盛が確立した濡須口の防御システムは、彼の死後も長期間にわたって呉を守り続けた。これは彼の軍事的才能の証である。